先日読売新聞に「歯が10本以上で認知症予防効果」という記事が掲載されていました。 その内容は「75〜84歳の高齢者を佐賀歯科医師会が調査したところ、認知症の人の中で歯が 10本以上残っている割合は22.1%だったのに対し、自立できている高齢者では49.6%で2倍以上も高い」というものでした。つまり噛む機能が維持できているということは、認知症の予防につながっている可能性が高いということです。
今月はむし歯治療の際によく耳にする「神経を取る」ということについてご紹介したいと思いますが、実は神経を取るということは、歯を残すために行う処置でもあるのです。
1. 神経ってどういうもの?
歯の中心部には、歯の象牙質へ栄養を補給するための細かい血管や神経が入り込んでいる場所があります。この部分を一般的に神経と呼んでいて、正式には歯髄(しずい)と言います。神経を取るというのは、この歯髄を取り除くということです。
2. 何で神経を取ってしまうの?
むし歯の治療で神経を取るのには、主に2つの理由があります。
●理由1 ・・・ 1つ目は痛みを取り除くためです。
むし歯が歯髄まで進行(C3ステージ)すると、歯髄も細菌感染して炎症が起き、あのズキズキとした我慢できない痛みを発生します。神経が感染・炎症を起こすと、基本的には治らない(不可逆性)ので、痛みを取り除くためには、やむ得ず歯髄を取るという治療になります。
●理由2 ・・・ 2つ目は抜歯を回避するためです。
歯髄まで進んだむし歯を放っておくと、歯はどんどん溶けていくのと同時に、歯の内部ではむし歯菌が歯髄を通り道としてさらに奥の根っこの方まで侵入(C4ステージ)して、根っこの先の骨までも溶かしてしまいます。もしこうなると、治療としては歯を抜くしかありません。そこで、抜歯するよりかは、一歩手前の段階で歯髄を取って人工物で穴を埋めることにより、細菌を入れなくし歯を残すという選択になるのです。
3. デメリットとその対処
歯髄を取るということは、神経と一緒に血管も取り除くということです。そのため象牙質への水分補給ができなくなり、歯が欠けたり割れやすくなる問題が生じます。これに対しては、歯髄を取った部分に象牙質に似通った材質のものを埋めることで補強します。また痛みを感じることができないため、再度むし歯になって病気が進んでも、気付かずに奥深くまで進行してしまう心配が残ります。これに対しては、歯科健診を定期的に受けていただくことが大切となります。