デンタルニュース

(平成24年10月号)

野生動物は歯磨きをしなくても、むし歯になりませんが、現代人は砂糖の摂取や、火を使って料理することで食べ物がやわらかくなり歯に汚れが粘着しやすくなったため、唾液による自然な自浄作用だけでは口の中をきれいに保てなくなりました。一見きれいに見える口の中でも、約300種類以上の細菌が、歯垢1gあたり1000億個以上も生息しています。経管栄養で口から食事を摂っていない人でも、口の中の古い細胞の死骸に細菌が繁殖する位ですから食べかすなどをそのままにした口の中では、細菌は天文学的な数に増加します。
そこで今月は『口の中の汚れ』についてお届けします。

汚れを、きれいにする理由は??

歯を失う2大原因の“むし歯”と“歯周病”は、どちらも口の中の細菌が原因の病気です。口の中の汚れは、病原菌増殖の温床となるので、歯みがきが必要になります。また要介護高齢者の口の中は非常に汚れが溜まりやすい環境にあり、身体の抵抗力も低下するので、健常者では見られない細菌も検出されることがあります。例えば、緑膿菌、カンジダ菌、肺炎桿菌、セラチア菌・・・・。これらは呼吸器感染症や、心疾患のリスクを増大させます。

口の動きの低下は危険信号!!

通常口の中は唾液の分泌によって、自浄作用が働いて、食べかすを洗い流しますが、高齢者の場合、老化や薬の副作用で唾液の分泌量が減少します。また噛む、話す、舌を動かすなど口の動きの低下も唾液量の減少となります。 病気や障害を抱えている要介護者の場合、自分できちんと歯みがきができないことや、介護者が身体の介護で手一杯となり、口腔ケアまで充分手が行き届かないということも汚れがひどくなる一因です。細菌は口の中で、いろいろな種類のものが集まってバイオフィルムという複合体を作ります。歯垢や入れ歯のヌルヌルもバイオフィルムです。バイオフィルムは抗生剤や殺菌剤、免疫も効かず、とってもやっかいなものです。

専門的クリーニングに必要!!

歯の表面や根っこ部分に強固に付着したバイオフィルムを取り除くには、PMCTという歯科衛生士の行う専門的な歯面清掃が必要となります。要介護高齢者では、誤嚥性肺炎のリスクが高くなることから、厚生労働省も定期的な専門家による口腔ケアの実施を推進しています。



▲このページの先頭へ