先日厚労省から、特養の待機者が52.4万人という調査報告が発表されました。その中で入所の必要性が高い、要介護4・5の在宅待機者は8.7万人。今後の団塊世代への対応も考えれば、やはり在宅介護・在宅医療の推進が急務かと思います。しかし在宅で介護を継続するめには、要介護度を維持(又は改善)しなければなりません。とてもハードルの高い課題ですが、それを可能にする効果的な方法の一つは、基礎疾患の維持管理をした上で、栄養状態を良好に保つことです。実は、そこには歯科がお役に立てる領域があります。そこで今月は『訪問歯科による栄養改善』についての情報をお届けしたいと思います。
栄養状態が改善すればADLも改善
要介護者の30~50%が低栄養であるという報告は多数あります。身体活動量の減少、多剤服薬、食生活環境(買物や食事の支度が不自由等)が低栄養の主な原因と考えられます。ご存知の通り、低栄養状態は認知症を発症・重症化したり、運動機能を低下させ、寝たきりを招き要介護度を悪化させる大きな原因です。さらに寝たきりとなった時に低栄養は床ずれの原因にもなります。反対に、低栄養状態を改善すると、46.7%にADLの改善が認められたという報告があります(厚労省「高齢者の栄養管理サービスに関する研究」)。栄養状態の改善は攻めの取り組みと言えるかも知れません。
食べようとしても・・・
栄養状態を改善する具体的な方法は、十分な量のたんぱく質とエネルギーを食事で摂取することです。しかしそこでひとつ課題が浮かび上がります。低栄養状態の方の食事を観察すると、食べこぼしとむせが非常に多く認められます。これは、摂食(咀嚼)と嚥下に大きな問題があるからと言えます。 ある特養における調査では、お茶でむせることや食べこぼしがしばしばある方は、ない方と比較して低栄養であると報告されています。食べこぼしの原因は、歯が欠損している、麻痺がある、入れ歯が合っていない等、咀嚼に問題があります。むせについては、嚥下に何らかの問題があるからと言えます。つまり口腔機能に異常がある場合は、低栄養になるリスクが高いということです。
訪問歯科の必要な潜在患者
現在、訪問歯科を依頼するきっかけは、入れ歯に関するものが8割、歯がぐらぐらする・痛い等が1割、その他が1割です。しかし要介護となる原因の半数が脳血管障害によるものであることを考えますと、食べこぼし、むせによって食事が十分にとれていない低栄養状態の潜在患者さんは、多数いらっしゃるのではないかと思われます。